【151杯目】コロッケ茶碗蒸し

「コロッケそば」。なじみのない人には、そのB級感漂う語感に「ふまなくてもいい地雷」と確定してしまうところだが、通の間では大人気メニュー。しかし、ぶっちゃけ味がまったく想像できない。つゆの染みたコロッケというだけで未知数だし、天ぷらでさえつゆがしみてグズグズになってしまうのに、コロッケなんか入れた日には、サルバドール・ダリが模写しにやってくるくらいドロドロに溶けて、原型を完全に失ってしまうに違いない。そしてその成れの果てがからみついたそばを、死ぬまで食い続けることになる。こんなものが本当にうまいのか。

お店で食えば答えは早いが、せっかくなのでブラインドコロッケそばに挑戦。もちろん、茶碗蒸しも。そばは生そば。出汁はめんつゆ使えば早いが、これまたせっかくなので、ちゃんと昆布とかつおからとって、さらに「かえし」も自家製。なるべくそばやに近い状態にする。コロッケだけは、惣菜コーナーのものを使用。牛肉を使ったタイプ。店によっては、最初からコロッケを出汁にくぐらせることもあるようだが、防具もつけずティガレックスを狩りにいくようなリスクは負えない。トースターでカリカリにあたためてから、慎重に乗せる。さて、味はどうか。

今のところ原型はキープできている。が、なんせ空気に触れると爆発するナトリウムに匹敵レベルの不安定さ。箸で切れ目を入れた途端にタイタニックのごとく沈没を始めないとも限らない。覚悟を決めてそっと箸を入れる…「ジャーーーーック!!!」…とはならず、意外にも問題なし。

味もまた、想像以上にうまし。濃いめのつゆが染みたじゃがいもは、肉じゃがを思い出させる。そば+コロッケの相乗効果はないが、とくに邪魔もしていない

このあたりからさすがにコロッケが崩れ始めるが、ドロドロというほどでもなく、じんわりとなじみ、つゆにコクと甘みが出る。なるほど、と思う。かき揚げが溶けてもグズグズになるだけだが、コロッケは溶けると「調味料」になるようだ。交尾を終えるとメスの体に取り込まれてしまうアンコウのオスのように、その身の全てを「そばの味変」に託し、消えていく。「シン、俺を天下に連れて行ってくれ」という、死に際のヒョウの声が聞こえるようで切ない。

結論。コロッケそばは、うまい。が、家庭で作る際はひとつだけ懸念がある。我が家でコロッケといえば、肉じゃがからのリサイクルコロッケをさすが、それをそばつゆに入れてしまうと、肉じゃがからせっかくコロッケにしたのに、また肉じゃがっぽいものに戻ることになるのだ。この巻き戻ってる感を受け入れられるかどうかが、家庭でコロッケそばを楽しむコツと言えるかもしれないし、言えないかもしれず、正直どうでもいい

というわけで、ひとまず試しに作ってみたが、あくまで「ブラインド」。本当の味はお店で体験するのがよさそうだ。
ところで、今回茶碗蒸しのレビューにまったく触れてないが、気づかなかったことにする。

2019-05-17 | Posted in 未分類No Comments » 
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