【79杯目】ぎんなんづくし茶碗蒸し
色的にも臭い的にも、明らかに「食べるな危険!」信号を発している、秋の旬な食べ物といえば「ぎんなん」。実際、食べ過ぎは体に良くない説すらあるが、旬の季節になると、我が家ではピスタチオのごとく異常なスピードで消費されるから恐ろしい。そもそも食うこと自体がやっかいで、非常に硬い殻に対し中身はやわらかすぎるため、へたな割り方をすると中身まで潰してしまう。そこがうまくいっても、加熱する時間がすこしでも長いと、今度は破裂してしまう。なんともめんどうくさい。
ぎんなんが、まともに具のスタメンを飾れる唯一のメニュー「茶碗蒸し」。茶碗蒸しとぎんなんが、なぜこれほどまでに相性がよいのかは判らない。個人的にはむしろミスマッチとさえ感じる。ぎんなん自体はたいして旨味がない。出汁を吸うわけでもなく、ぐにっとした独特の食感や香り、そして苦味が、どちらかというと卵と出汁の繊細な風味を邪魔してくる。かんじんの美しいエメラルド色は、卵に沈んで濁ってしまう。そもそも、エビや鶏肉、しいたけや筍といった豪華な具が入っているところに、わざわざ銀杏を入れる必然性が皆目不明だ。
それなのに、ぎんなんの入ってない茶碗蒸しは、まるでコブのないゲレンデのように単調でつまらない気がしてしまうから不思議だ。そういえば、卵液の中からぎんなんをみつけた時は、妙な達成感がある。その直後「!???」ってなる、味の違和感、不安感…。なければなにもなかったですむことが、良くも悪くも「存在する」ことによって意識せざるを得なくなる。ぎんなんとは、実は茶碗蒸しのアイデンティティーそのものなのかもしれない。
ただ、今回これだけは悟った。「ぎんなん入れすぎたからって、茶碗蒸しが旨くなるわけではない」
レシピ
材料(1人前)
- 卵 1こ
- 水 100cc
- 白だし 小さじ1
- ぎんなん お好み
- かまぼこ 適量
作り方
- ぎんなんは、キッチン用はさみの柄の部分で殻を割る。
- 30〜40秒レンジで加熱。あついうちに殻をむくと、薄皮ごとよくむける(やけど注意)
- 3つほど爪楊枝で串刺しにして、粗塩をふってグリルで焼き目をつける。
- 卵と水、白だしをよくまぜ、残りのぎんなんを入れ、器に入れる。
- 蒸し器にかけて、弱火で10分程蒸す。
- 蒸しあがりに、串刺しぎんなんとかまぼこを乗せ、ひと蒸しする。
2016-11-06 | Posted in 茶碗蒸し | No Comments »
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