【87杯目】目玉焼き茶碗蒸し

「俺の目の黒いうちは」とはいうが、目玉焼きにおいて、目は黄色である。目玉焼きは、簡単なようで意外と難しい。一般にはフライパンに割り入れた後、水を足してフタをする。つまり「蒸し焼き」にすることで、白身と黄身がいい塩梅に焼きあがるが、この方法だと黄身の表面は白く濁り、「目の黒いうち」どころか「死んだ魚の目」のようになってしまう。べつにどうでもいいといえばどうでもいいのだが、目玉焼きというからには、黄身を鮮やかに仕上げたい。

方法はいたって簡単、水も、フタもせず焼くだけだ。ただし、焼き加減に注意しないと、気づいた頃には黄身がコチコチ。裏はガビガビ。こうならないように、焼き上がりの瞬間に最新の注意を払って、瞬きもせず、なんなら息も我慢して挑みたい。できることなら脈拍も抑えたいが、こっちが「死んだ魚の目」になる危険があるので、ほどほどにしておこう。

ちなみに、類似料理に「フライドエッグ」というのがあるが、あれば目玉焼きとは別物。文字通り油に直接投入するその調理法ゆえ、出来上がりが毎回フリーダムすぎるため、容姿を重視した目玉焼きには芸術面で遠く及ばない。そういう意味で目玉焼きは、なにげにしっかり「日本料理」なんだなと思った。

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